Microsoftは DirectX 12 Agility SDK 1.620 Retail と 1.722 Preview をリリースし、このレイトレーシングの変更を2018年の DXR 登場以来最大のものと位置づけた。目玉となる追加機能は Clustered Geometry、Partitioned Top-Level Acceleration Structures、GPU駆動のアクセラレーション構造構築、そして Advanced Shader Delivery である。
戦略的に重要なのは作業の移行先だ。動的なシーンのアクセラレーション構造の構築と更新はCPUに依存し、フレームごとに大きなコストを発生させてきた。この処理をGPUに移行し、構造を分割することで、開放的でアニメーションの多い世界においてレイトレーシングのコストを高止まりさせてきた正にそのボトルネックに切り込む。このAPIは NVIDIA、AMD、Intel の GPU を等しく対象とするため、Microsoft は特定ベンダーを優遇するのではなく、共通の土台を引き上げている。競争圧力はドライバーとシリコンというスタックの下層に移る。これらの処理経路を最も効率的に実装したベンダーが勝ち、ハードウェアレベルでの差が残る可能性はあるものの、市場リーダーと追随者の間のギャップはAPIレイヤーで縮小する。
Advanced Shader Delivery は名前が示すよりも重要だ。シェーダーコンパイルによるスタッター(カクつき)はPCタイトルで長年の不満であり、プラットフォームレベルの配信メカニズムは、Microsoft がこれをスタジオごとの問題ではなくインフラとして扱っていることを示す。エンジンベンダーにとって、GPU ごとに細かく調整すべき項目が一つ減ることになる。
日本にとって、この関連性は直接的でありながら過小評価されがちだ。日本のスタジオは世界的に出荷される AAA タイトルやコンソールタイトルで依然として大きな割合を占めており、そのエンジンとグラフィックスチームはまさにこうした API の決定の下流に位置する。ベンダー横断的な効率向上は、ビジュアル面で野心的な日本タイトルを PC やマルチプラットフォームリリースに展開するコストを下げる。レイトレーシングは多くのチームが正当化できない負担だった分野だ。また、大規模なグラフィックスエンジニアリング体制を持たない小規模スタジオを圧迫してきた GPU ごとの最適化負担も軽減される。
ゲーム以外でも、同じアクセラレーション構造の進歩は、日本の産業用ビジュアライゼーション、自動車デジタルツイン、建築レンダリング業務に恩恵をもたらす。これらの分野では企業とそのSIerがリアルタイムレンダリングへの依存を深めている。Windows と DirectX 上でビジュアライゼーションパイプラインを構築する国内のインテグレーターは、GPU駆動の構築を遠い将来のロードマップ項目ではなく、近い将来に設計に組み込むべき機能として扱うべきだ。早期にリファクタリングを行うチームはコストと忠実度で優位に立つ。ベンダー固有のトリックを待つチームは後で再構築するリスクを負う。