深圳の開発者向けイベントで、OpenHarmonyとHiSiliconシリコン上で動作するNearLink近距離無線技術が地下鉄改札やスマート交通システムに導入された。FCCがブラックリスト掲載チップを含む機器の承認を拒否する動きと並行して見ると、米国の輸出政策と中国国内スタックが同時に成熟期を迎えた節目と言える。
FCCの方針転換が重要なのは、規制を部品レベルにまで押し下げたことだ。完成品の排除は一つの管理手段だが、掲載ベンダーのシリコンを組み込んだあらゆる機器の承認を拒否することで、ハードウェアメーカーは部品表を一行ずつ精査し、かつて汎用品として扱っていたモジュールを再調達せざるを得なくなる。これにより、コンプライアンスの脚注だった事項が、数か月のリードタイムを要する設計段階の判断事項へと変わる。
中国の対応はNearLinkに表れている。BluetoothやUWBに対抗する近距離プロトコルで、OSとしてOpenHarmony、チップベースとしてHiSiliconと組み合わせることで、中国のインフラ購買者に米国管理下の知財から完全に独立した接続レイヤーを提供する。地下鉄や交通システムへの導入が広がるたびに設置ベースが拡大し、次の購買者にとっての切り替えコストが低下する。数年かけてこれが進むことで、部品レベルの禁輸措置が生み出すはずの影響力が浸食される。なぜなら、禁止対象部品が対象市場に単に現れなくなるからだ。
日本企業にとっての実務上の問題は、製品ラインの分岐だ。米国と中国の両方に出荷する電子機器、自動車、工場自動化ベンダーは、今や異なる認証体制に直面している。米国向け機器はシリコンの監査可能性が必要で、中国向け機器はNearLinkやOpenHarmonyとの相互運用性が求められるようになっている。無線・接続部品を供給する日本の部品・モジュールメーカーは、一方の市場では出所証明を求められ、もう一方では別のプロトコルスタックのサポートを求められることになる。
日本のSIerや開発チームは、接続性とシリコン調達を調達上の細目ではなくアーキテクチャ上の変数として扱うべきだ。公共インフラ、モビリティ、産業IoTに関わるプロジェクトでは、どのスタックを対象とし地域固有ファームウェアをどう分離するかを文書化した方針が必要になる。単一のグローバルSKUを前提としていたRPAや統合チームは二つの製品を維持するコストを負担することになり、この分岐を早期に把握する企業は両体制がさらに厳格化した際の再設計を回避できる。