Walimai共同創設者:Alexander Busarov氏、Yaroslav Belinskiy氏とのインタビュー

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インタビュー記事

右:Alexander Busarov氏(アレックス氏) / 共同創設者 兼 CEO

左:Yaroslav Belinskiy氏(ヤロスラブ氏) / 共同創設者 兼 BDディレクター

Q:はじめに、簡単なプロジェクトの紹介をお願いします。

アレックス氏:「私たちはWalimaiです。コイン名ではWaBiとして知られています。WaBiは生活者向けの商品を扱う安全な流通で使えるロイヤルティ・ポイント*です。私たちは高品質な技術を使って偽物商品の問題解決を行っており、WaBiはそのシステムを成長させるためのポイントなのです。」

*ロイヤルティ・ポイント:飛行機のマイレージなどに代表される、頻繁に商品購入やサービス利用をする顧客が使えるポイント。Tポイントなどもその一種。

Q:二人のキャリアについて教えてください。

ヤロスラブ氏:「はい。おそらく高校時代までさかのぼることになりますね。実は1年だけ、日本の豊田市の高校に通っていたことがあるのです。実はそのときに中国ではありますが、三国志と漢字に魅了され、その後アジアに戻ってきました。学校はイギリスで、実はそこでアレックスと出会ったのです。アレックスとは高校時代からの友達で、同じ高校と同じ大学に行きました。大学卒業後、中国に来て4年間暮らしていました。アレックスはそのとき遊びに来て、私がとても楽しい経験をさせてからでしょう。彼も中国に残ることにしたのです。彼はマッキンゼーの仕事を去り、起業家としてここに残ることにしたのです。そして私は彼が中国に来た際に、コンサルの仕事に就きヨーロッパに戻りました。私はベインに行き、その間アレックスは中国で様々な起業のチャンスを探していたのですが、そのときに個人的な体験によって偽物商品の問題に出逢ったのです。」

アレックス氏:「私が個人的に体験したのは粉ミルクとは関係なくアルコールでした。当時、私は杭州にいてウィスキーをよく買うことがあったのです。ちなみに杭州というのは大都市で、アリババが拠点を置く二線都市であって非常に大きな都市です。そんな大都市の評判の良いお店でウィスキーを買っているのに、毎回不安だったのです。”明日具合悪くならないだろうか?本当にこれは飲んでも安全なのか?いや実は安全ではないかも?” でもふと考えてみると、21世紀で、かなり便利なスマートフォンを全員持っています。今のスマートフォンは私が15年前に持っていたパソコンよりもはるかに便利です。私たち全員が持ち歩いているスマートフォンはいろいろとできるのに、いまだに目の前にある商品が本当にパッケージに記載されている通りのものなのか確認できない。さっそく、昔からそうなのですが、まずはじめにヤロスラブにこの件について相談をしました。そして私たちはテクノロジーとビジネスの観点からいろいろとアイディアについて議論し始めたのです。ヤロスラブは当時ベインで粉ミルク関連の仕事をしていて、言ったのです。”確かにお前とアルコールの話もある。でも、粉ミルクと赤ちゃんの話もあって、中国でははるかに深刻な問題なんだ。” 当時私は知りませんでしたが、それを聞いたときに “よし、まずはこの領域にフォーカスすべきだ。” と思ったのです。そして何回か試行錯誤をした結果、どの技術を採用すべきかがわかったのです。」

Q:二人はどうやって一緒に起業することになったのですか?

ヤロスラブ氏:「どちらかというと、実際に話し合って決めたというよりも、ごく自然にそうなったのです。既に学生のときに一緒にプロジェクトに取り組んだこともありましたし、長い間お互いのことは知っていたので、自然に物事が前に進んでいって、一緒に起業することになりました。」

アレックス氏:「そしてこの関係は信頼だけでなく、重要な役割を果たしています。互いにコミュニケーションをとる際の理解度という意味で非常に助かると思います。ヤロスラブとは非常に長い仲なので、たまに普通なら長文になる話も二言くらいで互いに理解できるのです。」

Q:Walimaiのビジョンについて教えてください。

アレックス氏:「私たちは誰もが安全な商品を手に取って使える世界を実現しようとしています。私たちが世界に構築している安全な流通では、そこで買い物をしたとき、その商品が安全で、パッケージに記載されている生産者から届いたもので、それを食べたり、飲んだり、その他の方法で利用したりした後も具合が悪くならない、そういった世界を実現しようとしているのです。」

ヤロスラブ氏:「また、より大きな視点でみると、私たちは一種の世界最大のITネットワークを構築しているのです。なぜなら、私たちはどこにでもあって低単価である消費財をスマート化していて、その商品のスマートパッケージ化を通じてあらゆることができるようになるからです。」

アレックス氏:「よく “競合はどこか?” と聞かれるときに、多くの人は私たちの競合が商品ラベルを生産する会社や、ブロックチェーンで偽造防止をしようとしている会社だと思っているようなのですが、消費者のために安全な流通を構築している私たちにとって、エンドユーザーは実際に商品を買って、それを食べたり飲んだりする人たちなのです。つまり、私たちは小売店のカテゴリーに当てはまるのです。私たちにとっての競合は他のベンチャーやメーカー向けの業者ではありません。私たちの競合はアリババやウォールマートなどの会社だったり、」

ヤロスラブ氏:「アマゾン」

アレックス氏:「そう、またアマゾンのような会社。そういった会社たちなのです。もちろん、彼らは巨大で私たちは小さなベンチャーなのは知っています。でもそれは良いのです。私たちは同じ市場の中でも “安全な商品” の領域を自分たちの強みとして削り取っているのです。」

Q:既にメーカー各社も偽造防止策は実施中だと思いますが、今の課題は何なのでしょうか?

アレックス氏:「技術革新に伴い、企業は自社の利益とコストを考慮したうえで特定の技術を選んでいます。より具体的には、ビジネスにとっての利益、彼らの顧客である消費者にとっての利益、そしてその利益のために最終的に支払う必要があるコストです。そしてよく見受けられるのは、小売店もメーカーも、多くの企業は必ずしも消費者目線に立ったアプローチを選んでいるわけではないということです。」

「私たちは、比較的大きい小売店ではビッグデータなどを活用して偽造防止策を構築しているところを見てきました。何が行われているかというと、大量のデータを分析して問題の大部分を解決しようとしているのです。これは資源の一部を使って問題の一番大きな部分を解決するという、ごく普通の経営論的な2:8の法則に基づくアプローチです。それによって、問題の70%、90%、いやもしかしたら95%解決できているかもしれませんが、100%にはなりません。」

「もちろん、問題解決にはつながっているのですが、消費者の視点に立って考えてみましょう。何かを買って、それを自分で消費するのか、それとも友達にあげたり、両親や赤ちゃんにあげたりするとき、それは100%安全であってほしいのです。99%でも足りないのです。そこに違いがあるのです。この視点の違いによって、たまに企業は安全性が100%担保できないソリューションを選択しているのだと思います。その取り組みに意味はあるのですが、消費者にとってそれではダメなのです。」

ヤロスラブ氏:「一点補足すると、100%の信頼性を担保できる頑丈で強固なシステムを構築する際に重要なのは、今中国で一部の小売店やEコマースが取り組んでいるような、ただ単にラベルやシールの作成や、ビッグデータ分析でもないのです。ビッグデータ分析の一環として、ブロックチェーンを活用した偽物商品の特定を目指していますからね。必要なのは3つの要素すべてなのです。」

「まず欠かせないのが<商品>と、ここではブロックチェーンと呼んでいる<商品のデジタル表現>の両者をしっかりとつなぐノウハウです。次に、データを生成してもその後どうするかわかっていなければならないので、データ分析プラットフォームが必要です。そして最後に、望む行動を消費者にとってもらうためにも、消費者とエンゲージできる必要があります。なぜなら、もし設計したものが消費者に使ってもらえないのなら、どれだけ安全な設計でも成り立たないからです。」

「したがって、私たちが競合と違う点は、この3つの競争優位性のある要素を組み合わせた強固なシステムを構築したことなのです。なぜなら、私たちにとって、大手の消費財メーカーは必ずしも技術に明るくなく、ある会社にソリューションの一部を外注することはできますが、今お伝えしたようなことを包括的に実施するのは、通常彼らのキャパシティを超えているのです。なお、それはメーカーが悪いのではなく、単純に彼らの強みは違うところにあるということです。メーカーのほとんどは製造とマーケティングおよび販売を行っていて、技術開発はやっていないのです。」

Q:どうやって今のソリューションにたどり着いたのですか?

アレックス氏:「絶対にセキュリティを崩すことのできないシステムを思いつくまでは数々の議論がありました。実際のところ、様々なソリューションを試したのですが、とりあえず何があるのか見てみようというところから始めました。まずは偽造防止業界の専門家を何人か探し当て、電話でいろいろと話を聞きました。”このソリューションについてはどうなのか?”  “あれはどうなのか?”  “どっちのほうが良いと思うのか?”  “なぜそれは安全もしくは安全ではないのか?” など。」

「そこで気づいたのは、私たちが話している専門家たちは、まだ19世紀に生きているということでした。彼らは未だにホログラムについて話していたのです。こっちのほうがあっちのホログラムより安全だとか、防御レイヤーがあれば偽造者が同様の印刷をするのに追いつけないとか。でも、そもそもホログラム自体、論点がズレているのです。どのホログラムであろうが、消費者はわからないのです。これはホンモノなのかニセモノなのかなんて、消費者はホログラムを見ても絶対にわかりっこありません。」

「そのとき私たちは “よし、これは解決すべきだ。” と考えました。業界があまりにも遅れていて、それが問題だというより、私たちが解決すべきチャンスだと思いました。それで私たちはコピーできない要素が含まれているQRコードなどのユニークIDなど、複数のソリューションを検討し始めたのです。今何社かのベンチャーがまさにその技術を活用していますが、それを見ると自己本位ながらも嬉しいんですよね。なぜなら、私たちが3年前に持っていたアイディアを今になって他のベンチャーは試しているので、まだ私たちは先を行っているということなのです。ある意味、若干の安堵感を覚えます。他にも様々なソリューションについて議論をしていたのですが、ヤロスラブが気づいたのは、どれもアナログであるということでした。」

「たとえば、先ほどお話していたQRコードのマネできない要素というのも、砂やペンキをべたべたの紙にスプレーしたら、その模様はコピーしづらいというものなのですが、それでも非常にアナログですよね。それに対してRFIDというデジタルの手法があり、全般的に世の中はアナログからデジタルへと移行しています。ビデオでもオーディオでも起きたことですが、それは私たちも同様でした。そのような経緯でRFIDにたどり着いたのですが、このソリューションについても、様々な形で精査をして、自分たちが反対側(偽造者側)にいたら、どうやって壊せるのかをあらゆる観点から検証した結果、今のソリューションなら成立するという結論に至ったのです。」

Q:今まで直面した困難や逆に成功体験について教えてください。

ヤロスラブ氏:「困難については、ベンチャーをやっていると、いつも落胆だらけです。なぜなら、予想を立てて、計画を練って、それでその通りに進むことなんて絶対にないからです。毎回転んでいるような気分でした。なぜなら、コンサルにいたときは何かを達成したときの喜びが特典としてあったのですが、ベンチャーでは、世の中が本当に残酷なのです。たとえば、まだほぼ紙だけのベンチャーだった初期段階にベンチャーキャピタルに会いに行ったのですが、だいたい言われるのが “面白いアイディアだけど複雑すぎるよ。” だったのです。」

「欧米から遠い中国という国で、誰も気にしていない問題に取り組んでいると辛いです。今は違うと思いますが、少なくとも当時のカリフォルニアではそうでした。そしてはじめ何よりも大変だったのは、自分の見事な計画を絶えず否定されるという逆境を乗り越えることでした。自分の赤ちゃんみたいなもので、誰かにそれが不細工だと言われると、親としてはそんなこと聞きたくないわけです。でもある時点から、神経が図太くなってきて、否定されても「はいはい」と思うようになってくるのです。なお、成功が最大の復讐だと言いますが、今日に至るまでいろいろとありましたね。たとえば、一度も会ってくれなかったベンチャーキャピタルが今度は逆に会ってくれとしつこく追いかけまわしてきて、関係を修復しようとするなど。これまでの道のりは本当に勉強と成長が多かったです。」

アレックス氏:「なお、成功体験についてはいくつかあります。ソリューションのセキュリティについては、完成した際にITやセキュリティに特化した大学教授に見せに行ったのですが、そのとき “このセキュリティの壊し方は考えられない” と言われたときはとても嬉しかったです。また、ソリューションを実行に移すとき、はじめは企業にアプローチしていたのです。はじめは、”よし、これはすばらしい技術だし、メーカーに大きな利益をもたらすぞ。” と思い、B2Bに振り切って大手食品メーカーやアルコール・メーカーに一社一社、会いに行ったのです。でも大体が社内政治や “ああ、それはコストが上がるからな。” などといった理由で消滅していき、そこで、”もうここは方向転換して消費者にアプローチしよう。” と思ったのです。そして、万が一消費者が “これはどうでもいい。興味ない。” と言ったら、会社はたたもうと考えていました。でも結果はそうではなかったのです。」

「私たちは、私たちのプロテクション付きのベビーフードを同じ小売店の通常価格よりも20%高く販売し始めたのです。販売先はJD。JDドットコムという中国で二番目に大きいECプラットフォームです。そこで消費者は、たとえば200元の商品を、まったく同じ商品に私たちのラベルが付いて240元、20%高い価格で買えるのです。すると消費者は私たちの商品を買っていたのです。JDは大きい会社で評判も良いし、商品へのマーケティングをたくさんやっているにも関わらず、消費者は私たちのプロテクションに20%追加でお金を払っていたのです。」

ヤロスラブ氏:「それだけでなく、たしかお客さんの40%くらいはまた買いに戻ってきてたよね。」

アレックス氏:「そう消費者は戻ってきて買い続けてくれたのです。これがきっかけで私たちは “これは消費者にとってとても大事なことなんだ” と確信を持ちました。おそらく過去2年くらいで大きな成功体験の一つはこの反応だったと思います。消費者から良いフィードバックをもらえるようになって、”ようやく赤ちゃんのために買い物ができて、もう心配する必要ないなんて最高だわ” と言われたのは光栄でした。」

ヤロスラブ氏:「実のことを言うと、たまに私たちの在庫がなくなってしまうので逆に申し訳なく思うこともあるのです。たまに売り切れて在庫がまったくないのですが、そういうときに消費者から連絡があって “一体いつなの?一体いつ?”」

「 “私は一体どうすればいいの?粉ミルクをどこで買っていいのかわからないわ。もう他はどこも信用できない。”  したがって、なおさらオペレーションを強化して更にスピードを上げていかないといけないというプレッシャーを感じています。

Q:現状のビジネスモデルはどのように出来上がったのですか?

アレックス氏:「この質問には二つの側面から回答します。一つ目は、どのビジネスモデルなら成立すると思ったのかとなぜか。そして二つ目は、どちらかというと仮想通貨の経済性と、ブロックチェーン上でトークンがどのように使われるのか。」

「一つ目については、最大の価値は消費者にあると考えています。大手か、消費者と向き合っている会社でないかぎり、大きな問題を本当に解決することはできません。なぜなら、あるメーカーか複数のメーカーにソリューションを提供しようとするとき、大体、各社他とはまったく異なる要求をしてくるし、どこもコストを最小限に抑えようとしている中でソリューションをコストセンターとしてしか見ていないので、”あなたは弊社のパッケージ費用を5%上げる。これは大きい。”  などといったことを言われるのです。したがって、そういったソリューションは良く見られません。それに対して消費者の場合は、先ほどお伝えしたとおり、”自分の赤ちゃんのために20%なんてどうでもいい。もちろん買います。”  と言ってくれるのです。したがって、ビジネス面ではB2Cのほうが圧倒的に良いのです。」

「さて、ここで仮想通貨(トークン)が他の会社の場合どう使われているのかを例に挙げます。通常、他社ではブロックチェーンの利用料としてトークンを使っているのです。つまり、データや取引を処理するスマート・コントラクトをブロックチェーン上で実装させる費用だったり、それ以外でも何かしらの取引がブロックチェーン上で起きた場合の費用としてです。」

「私たちの場合、トークンの用途は異なり、消費者が使えるロイヤルティ・ポイントなのです。これは用途と、どれくらいの規模まで成長し得るかというポテンシャルの観点から、他社とは大きな違いがあるのです。他社について挙げたはじめの例だと、”誰がこのトークンを実際に使うのか” という質問があるでしょう。このケースでは、ブロックチェーンの利用料としてのトークンなので、サプライチェーンが購入するのです。その際に “なぜ今のままではなくトークンを買う必要があるのか” という点については、いくつかのベンチマークはあるでしょう。それは現在ITにいくら払っているのか、あるいはサプライチェーンにいくら払っているのかということかもしれません。旧来のシステムからのアップグレードという考え方なら、ITがわかりやすいかもしれません。さて、ネスレやダノンなどの巨大な食品会社がITインフラにいくらお金をかけているのか知りませんが、中国でのインフラに2-3百万ドル(2-3億円)以上はかけていないと思います。それ以上は払っていないと思うのです。また、それらの企業が更に中国で成長した場合、この費用は同じままか、大して増えないと思います。」

「ブロックチェーンはインフラの改善になるので、先ほどのトークン購入に使われるお金というのは、こういったお金なのです。」

「私たちの場合、トークンを購入するのはマーケッターです。私たちのトークンは、企業が消費者のロイヤルティを育むお手伝いをします。したがって、私たちは企業のIT予算ではなくマーケティング予算を取りに行っているのです。粉ミルクやアルコール、そして医薬品などの利益率が高い商品では、マーケティングの比率は非常に大きいです。たとえば粉ミルクでは小売価格の20-25%はマーケティング費用ですが、先ほどのネスレやジョンソン・エンド・ジョンソンもしくはダノンなどといった大手企業を見ると、中国では各社年間10億ドル(1,000億円)くらいの売上があります。10億ドルの25%は2億ドル(200億円)台です。私たちはそこを狙っているのです。 企業がSAPに払っているような2-3百万ドル(2-3億円)ではありません。これは全然違うのです。」

Q:ワリマイのマーケット戦略として、どの地域と業界にフォーカスするのか教えてください。

ヤロスラブ氏:「B2Cのチャンネルに関しては、現時点では中国にフォーカスしています。理由は市場規模も大きいですし、課題も多いからです。B2B商品に関しては、グローバルです。おそらくフォーカスは中国になりますが、それは制限があるからではなく、中国が一番問題が大きいからです。でも東南アジア全域もカバーしていきますし、医薬品にシフトしたらインドとアフリカには絶対に行きます。いずれにしろ、私たちは消費者と共に動いているので、現時点では消費者は若いお母さんです。となると、まずは赤ちゃんに粉ミルクを飲ませ、彼女自身もサプリなどの薬を摂取しているでしょう。また、化粧品も使いますし、それは妊婦向けや若い母親向けもあるでしょう。そしてビタミンや魚油などの様々なサプリもありますが、これらは若いお母さんの “買い物かご” だけの話です。そして次にお父さんがいるわけですが、たとえばプロテイン・パウダーがあります。これは利益率が高いので偽物も多く、たしか中国では売られているもののうち60%くらいが偽物だと思います。」

「この問題は巨大なのです。多くの人はどれだけ市場が大きくて、どれだけ問題が大きいのか知らないのです。また、プロテイン・パウダーの他にもちろん、アルコールがあり、アルコールは狙いやすい反面全員狙っていて既に様々な手法が試されている最中なので、なかなか入り込みづらいのです。特にメーカー自身、成功の度合いは違えど、独自のソリューションを実装済みですからね。私たちは高利益率商品から狙って展開しています。それは利益率が高いからではなく、規模を拡大するまでの間、高利益率は確かに助かりますが、高利益率商品の多くが偽造者を引き寄せるからなのです。偽造者も安いものの偽物をわざわざ作りたくないですからね。」

アレックス氏:「もう一点付け加えると、たま “なぜ中国とこの商品だけにフォーカスしているのか?” と聞かれることがあるのです。中国では毎年1,800万人くらいの赤ちゃんが生まれています。つまり、粉ミルクを飲む赤ちゃんの両親は大体1億5,000万人くらいいるわけです。さて、これは両親だけを見た場合の市場規模です。そこに子育てに関与している祖父母も加えると、2-3億人いるわけで、それは中国のみ。そして粉ミルクのみで考えた場合なのです。」

「さて、ここで視点を変えてイーサリアムのウォレットの数を考えると、どれくらいでしょう。2,000万、1,500万くらいでしょうか。忘れてしまいましたが、急速に伸びてはいるものの、まだ数は少なく、それもウォレットの数なわけです。実際にそのウォレットを使っている人数については、300万から500万くらいでしょう。したがって、私たちのトークンであるWaBiを使ってもらうためのターゲット市場を比較すると、それは私たちのプロテクション付きの商品を買ったり、WaBiを保管していたり、トークンを使って物を買ったり、物を買った際にトークンをもらったり、あるいはロイヤルティ・ポイントとして使ったりなど、それは現在の仮想通貨人口全体の100倍以上なのです。」

「それを踏まえると、周りからもっと仮想通貨業界内でのマーケティングにフォーカスすべきだと言われるとき、300万人にフォーカスするのか、それとも3億人にフォーカスするのか。もちろん、後者の市場のほうが標準的な市場なので、時間はかかります。仮想通貨市場のほうが動きは速いですが、従来の市場で勝てるし勝たなければならないのです。なぜなら、前者で勝っても、3億人のほうで負けたら時間の無駄だからです。ここが勝つべきところなのです。」

日本に来る予定はありますか?

ヤロスラブ氏:「今B2Cの領域では新しい小売店モデルを構築中なのです。その一部はO2Oの一環としてオンラインとオフラインの購入をつなぐもので、既にプロトタイプもあり、一部のお店ではそれを通じて商品を売っているのですが、現在そのモデルの次世代型を設計中で、今よりもはるかに良いものになる予定です。実はこの商品のインスピレーションが日本の自動販売機から得たものなのです。JR線のホームに設置されている最新版ですね。画面は完全にデジタル化されていて、カメラを使った消費者の認証など様々な機能が盛り込まれる予定です。詳細はまだ現段階では言いませんが。」

アレックス氏:「まさに私たちはB2Cの会社だとお伝えしましたが、これは小売店の次世代型です。」

ヤロスラブ氏:「長期的には自動販売機と商品ピックアップの組み合わせを実現したいのです。そのインスピレーションが、高校時代に日本で私が大好きだった自動販売機から来ているのです。日本は仮想通貨コミュニティーも比較的大きいと聞いていますし、どこかのタイミングで絶対に行きます。また日本からのインスピレーションの多くは、私たちの判断にも影響を与えているので、人が自動販売機とどうかかわっているのかを勉強しにいくためにも行きたいと思います。様々なものが日本で始まって今中国に来ていますからね。昔は逆でしたが、今は完全にそうです。自動販売機も、数カ月前から中国でも出てき始めています。その数もどんどん増えてきているので、中国での消費パターンも日本を真似て近づいてくると思っています。したがって、勉強のために絶対にどこかのタイミングで行きます。」

アレックス氏:「また、もう一つあるのが中国で売られている日本の商品です。中国は日本の隣にある巨大な市場であり、日本の商品は他と比べて質が非常に高いので、よく偽造されることを考えると、中国市場に日本の商品をしっかり守って届けるのは、私たちにとってもチャンスなのです。」

ヤロスラブ氏:「たとえば中国の小売店に行くと、カタカナやひらがなの記載がある商品があるのです。中国産なのですが、日本の商品と見せかけるために日本語を付けていて、どれも偽物なのです。イギリスの衣料ブランドのスーパードライみたいに、適当な文字なので日本とは無関係なのですが、それでもイメージを作ろうとしているのです。そんなことをしても、日本のイメージがあれば高く売れますからね。」

日本の視聴者に対してメッセージをお願いします。

アレックス氏:「私たちが日本に行く際には、必ず事前に告知をします。私たちは常に様々な形で告知はしているので、フォローしてくださっていれば必ずわかるでしょう。東京に行く際には大勢の方々とぜひお会いしたいですし、ほかの都市にも行きたいと思っています。」

ヤロスラブ氏:「豊田市」

アレックス氏:「ヤロスラブが一時期学校に通っていた豊田市もあるかもしれませんね。日本でぜひ直接お会いしましょう。」

最後に、二人とのインタビューを振り返る(高山)

安全性というのは、高ければいいのではなく、絶対に100%でなければならない。アレックスさんの言葉は、企業が生産する何百万、何千万個とある商品のうちの一つを手に取る消費者、そして何よりも、それを自分の赤ちゃんのために買っているお母さんの気持ちを代弁しているように感じました。仮に偽物の確率が0.0001%だとしても、100万個買われる粉ミルクのうち、偽物を飲まされるのは誰の赤ちゃんなのか?

それが自分の赤ちゃんかも知れないという状況は何がなんでも避けたいものです。

実は、皮肉にもアレックスさんとヤロスラブさんが会社の設立祝いにセブンイレブンで買ったサントリーのウィスキーが偽物で、翌日、二人とも激しい嘔吐に苦しんだそうです。アレックスさんは、仮にホログラムが偽造を防止できても、消費者が確認できなければ意味がないと言っていましたが、それはこのようなトラウマを通じて、信頼できる小売店やブランドでも偽物は紛れ込んでいるという実態を知っている消費者にとって、どれだけ買う瞬間の安心感が重要なのかを考えさせられました。彼らのラベルは、最先端技術によって担保されている安心のシンボルなのです。

はじめは数多くのベンチャーキャピタルに否定されながらも、自分たちのやるべきことを信じ続けて、そして形にした。しかも、その突破口は、企業から消費者に目を向けてからだったというのは、投資や提携を判断する企業側の担当者には、未だに消費者の声が十分に届いていないことを物語っていると思います。そう考えると、Walimaiは単なるブロックチェーン・プロジェクトではなく、たまたまブロックチェーンを活用している立派な小売業であり、アマゾンやウォルマートにはない明確な強みがある会社だと思いました。

現状の問題に対するアツい想いに加えて、二人の徹底的に考え抜かれたビジネスモデルと戦略は、話を聞いているだけで、安定的に利益が出るイメージがつきました。また、Walimaiのラベルが貼られているだけで、商品が1.2倍の価格で売れるというのは、未だにデフレの日本では想像もできないことで、それだけ消費者にとって深刻な問題を解決できている証拠です。

中国に自社商品を輸出する日本企業は多いですが、中国は偽物が多い国だから、ある一定量は現地で偽物が店頭に並べられても仕方がないと割り切るのではなく、ぜひWaimaiのようなベンチャー企業と組んで、海の向こうで、一つの商品を手に取る一人ひとりの消費者のために、100%の安心を届けてもらいたいと思います。

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